三井堂時計修理にっき

船橋市の時計屋三井堂(http://www.mitsuido.com)での時計修理の様子をお届けします。    修理の依頼、相談は(ikezaki@mitsuido.com)まで。

2018年03月

今日もやっていきます。
前回予告していたとおり、まずは1本目アクアテラクオーツ2本だてです。
文字盤の色が違うだけでまったく同一のキャリバーを2日違いで修理依頼いただきました。
ロレックスならともかくオメガだと結構な偶然ですネ
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面白がってどっちが外装きれいにできるか大会やってました
主催者俺1名参加者俺1名…苦笑
上はベゼル周りの傷が深すぎてギブアップ、この手のケースは研磨しすぎてラインが崩れるのがこわいですね。(ラグのツヤ消し部分を保護するのが面倒だったわけでは断じてない、断じて)
ナカミは普通のETAクオーツですが、ETAの中ではやや部品数が多いほうでしょうか。
年代が新しいので特に深刻な不具合もなく通常のOHでOKでした。防水検査もクリア。

ここまででお昼休憩を一回はさんで後半戦です。
3本目ロレックスデイトジャストcal1570
パーツ(二番車)の買い付けに行ってもらったロレックスですね。
部品1つで2万円かぁお客さんに悪いことしたなぁと思っていたんですが、伝票をみると1万円でした。
どうやら2万は純正パーツ、1万はジェネリックなんだそうです。
ジェネリックでも構わないかお客様に確認をとると
"あのねェ、とにかくちゃんと動くようになればいいのよ”とのこと…ごもっともでございます…!
部品の金額が1万円になることをお伝えしてジェネリックパーツで組み込んでいきます。
(ジェネリックパーツは純正と比べると耐久性は落ちますが、二番車くらい大きいパーツであれば大丈夫です、ちゃんと定期メンテさえすれば…)

さーて組み込むその前に!ガリガリに削れた地板の穴もつめねば!
ガタなしぴったりに調整しましたらば輪列を組み込んでいきます、あわせてアガキもチェック…上々ですね。
香箱の摩耗も気にしつつゼンマイ交換し、あとは各所の摩耗をチェックし組み上げ完了。
ツツカナを軽くカシメなおして…完璧だ!あとは消磁をして精度調整です。

1570はガッツリ精度を追い込むのはなかなか難しいキャリバーです…が、テスター上ではなかなかいい数値に収まりました。姿勢差考慮で+10秒くらいでしょうか。
あとは実際の日差を見て調子がよさそうならケーシングします。まぁそうすんなりいってくれないのが1570ではあるんですが…頼むぞぉ!

明日30日はお休みをいただいてますので、休み明けに備えてチュチマとミューレグラスヒュッテのオートマ2本の防水検査とケース洗浄を済ませておきました。
珍しいメーカーの時計ですが2本とも中身はETA2824です。休み明けはこの2本を仕上げる予定です。
余裕があればETAクオーツをもう1本やります。
それではまた土曜日に~。

本日もやっていきます。
1本目セイコーレディースクオーツ
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輪列受けを外したところです。
セイコーのクオーツは大体がこの構造になってまして、ものによっては歯車の材質がかわったり、ハックの機構にちょっと変更があったりします。
今回のモデルはセイコーのノーネームクオーツなので随所にプラスチック部品が使われたムーブが入っています。

こんなムーブでもしっかり丁寧に仕事していくと、腕があがっていく…ような気がします。OHと消磁を済ませケーシングをして終了です。


2本目セイコーエクセリーヌクオーツ
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エクセリーヌになると金属パーツ比率が増えます笑
輪列ウケにも金属がはめ込まれていますね。
材質がかわっただけでほぼ構造はかわりませんのでさきほどと同じようにOHと消磁をしてケーシングして終了です。
ちなみにコイルとオシドリにかかっているパーツはハック機構(レバー?)です。

さて3本目ロレックスデイトジャストcal1570
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名機と名高いcal1570です。ずいぶん久しぶりのOHのようで劣化したパッキンとケース縁の汚れがムーブ全体に広がっていました…。
各部の摩耗をチェックしつつバラしていきます。
ここまでのヤレ具合にもかかわらず一番芯の上下ウケの摩耗がまったくありません…うーむイヤな予感がします。
輪列をばらしていくと…むっ二番車が…
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カナの上の部分、つまり地板に刺さる部分の摩耗が著しいですね。
軽くローターで削った後なのでややわかりにくいですが、摩耗して太さが不均一になり、横に無数のスジがはいっていますね。
これを均一な太さにまで削ってその太さにあわせて地板の穴を詰める…のははっきりいって無理です。
さいわい1570の二番車は部品屋に在庫があるそうなので問い合わせてみました、お値段なんと2万円…!
お客様に追加費用のご相談をするとしばらく悩んだのちに了承いただきました。ありがとうございます…!

二番車がないんじゃ組むものも組めませんのでとりあえず今日は1570はここまで。
木曜日に部品の買い付けにいってもらい、届き次第組み上げます。

さーてここからはたまりにたまった伝票の入力作業をします。
本当は2日に1ぺんくらいで入力すれば楽なんですが、どうしても半月くらいはため込んでから重い腰をあげて入力…ってのがやめられないんですよね。
夏休みの宿題をため込んでいた小学生のころからメンタリティがまるで成長していないなぁ…。

入力作業がようやく済むと18時でした…つっかれたぁ。
終業まで少し時間が余りましたのでアクアテラクオーツ2本の外装仕上げと部品の洗浄だけ済ませました。
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短針だけ1時間ごとに針送りしてカレンダーを変えるタイプですね。カレンダー回りがちょっと変わったタイプで面白いです。

休み明けはこのアクアテラクオーツ2本と1570の仕上げを済ませる予定です。それではまた木曜日に~。


いいお天気が続いて気持ちが良いですね、今日もやっていきます。
本日1本目グッチクオーツ(RONDA761)
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いまやグッチもロンダムーブを使ってるんですね、青ETAくらい使えばいいのに。
ただしロンダはロンダでも人工ルビーを4石つかってあるので同社の中ではやや高級寄りなんでしょうか。
2000円くらいの牛丼みたいなもんですかね…たとえが拙いですね、バラしていきましょう。
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このように非常なシンプルな構造になっています、こういうシンプルなのに限って輪列のホゾがなかなか入らないんですよねぇ。久々だったので5分くらいホゾ入れに格闘してました。
損耗箇所なんかは特に見当たりませんでしたのでそのまま通常通りのOHで終了です。


2本目オメガコンステ2針クオーツ

千葉某所にあるウチとは別の三井堂さんで以前修理したそうなんですが、その際に針を曲げられてしまったそうな。
ハタ迷惑な話ですな!どうせならいい評判を共有したいものです。
さてさて今回は針曲がりの直しとOHを合わせてご依頼です。

よし針からいくぞ!と思いきやお預かりの際に先輩が治していたらしい…ガックシ
気を取り直してバラしていきます。
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カサ車の左ななめ下、カレンダー中間車にビッッシリと緑青が…うひぃ
続けてバラしていくとツツカナ車と中央のシャフトにもびっしり緑青がぁ、これはいくらなんでも動くわけないですね。
見える部分の汚れはグラスファイバーでこそげとり、シャフトの中は極細の紙縒りでしつこくお掃除!
中間車はカナの錆もひどいのでさすがにこれは交換、ストックあってよかったぁ。
ステップローターも横っ腹のカビ?のような汚れもすごかったですねぇ、掃除のし甲斐があります。
しっかり部品を洗いまして組み上げ、注油、消磁…電池を載せて…よぉし動いた!
達成感あるなぁ…!

浸水した後長い時間をかけてムーブ全体に緑青が広がっていったみたいですね。
裏ブタ、リューズパッキンにグリスを塗布しましたが、あまり防水性に関しては期待しないほうがよさそうですね。

さぁー次々!3本目シチズンエクシードレディース
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よくあるシチズンムーブですね、レディースにしては珍しく三針モデルです。
シチズンはクオーツでも地板がちゃんと金属なのはえらいですね、セイコーは見習え!
ナカは変わり映えしませんので割愛(写真を撮り忘れただけです)
でもこの手のクオーツムーブが何気~に輪列の組み上げが大変なんですよねぇ、一瞬でホゾもおれちゃうし地味に神経使います。

あ、あとこういうのに限って一生懸命カナなんか磨いていると歯車が分解しちゃうんですよね…
今回の修理でもツツカナ車がジョイント部分から分解して、うわめんどくせえ!とか言いながらタガネで再ジョイントしてました。
クオーツも案外大変なんですよ、ほんと。
部品数だけじゃ修理の手間ってはかれないです。

さてさて、しっかり磨いて組み上げ、消磁しましたらば針をセットして終了です。
レディースの針は小さいので当然歯車に刺さる固定部分(ハカマといいます)も小さくなり、針付け難易度がやや上がります。
今回もしっかり適正間隔に針付けできました nicejob!(自画自賛)

ここまでやって18時になりました。
あとは終業時間までよく使う精密ドライバー5本と組み上げ用ピンセットと銅ピンを研いで終業時間を迎えました。
本当は2日に1回くらいは道具の手入れしたいんですけどね、時間ぎりぎりに仕上がりそうなのがあるとついそっちを優先しちゃうんですよねぇ。反省反省。


さて明日は残り2本のクオーツとロレックス1570の予定です。それではまた明日~。






本日もやっていきます。
昨日に引き続きオリエントスターですが、「ヒゲ調整したんだけどどうもうまくいかなくてさぁ」とヒゲ調整を親父に投げると10分くらいで治って戻ってきました… なんでだよォ!
ヒゲの調整ばっかりは本当に経験あるのみですね…チョロいと思ってましたがまだまだ修行不足!
精度は安定したので実際の日差がどれくらいになるかしばらくランニングテストします。

気を取り直しまして
本日1本目セイコー56ロードマチック(カレンダーなし)
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えらい久々に施工しましたが、このキャリバーはセイコー自動巻きの中ではいい出来ですよね。
ウィークポイントのカレンダーがないのもgoodです。
一番芯受け穴だけ摩耗していたのでそこだけ穴詰めして通常通りのOHをして終了です。
概ね良いコンディションだったので精度もキッチリ詰められそうです、休み明けに様子をみてケーシングします。
もうちょっとナカミについて書きたかったんですが、写真撮り忘れたので割愛…
また次の機会に!黎明期だけあって構造がユニークで面白いんですよね、写真撮っとけばよかったぁ。

2本目オメガシーマスター(ETA2892)
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いつものオメガチューン2892です。内部に関しては5年前に私の先輩がOHしていたので特に目だった不具合箇所はありませんでした。
今回は通常のOHのみで対応可能でした。

外装仕上げのビフォーアフター画像をお見せしようと思って仕上げ前後の写真を撮ったんですが…磨いた後に同じアングルでとればよかったなと後悔しました…。
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結構がんばったんですけどアップで見るとさすがに粗が目立ちます。
ポリッシュ部分に傷がついてるならそのままバフかければいいんですけど、ヘアラインに傷がつくと大変なんですよね。
粗→細まで3段階のコンパウンドを順に使って磨き上げるとヘア部分の傷も多少マシにみえます。
遠目で見ればまぁまぁごまかせてる…はず。

当店ではOHに合わせてサービスで外装仕上げを行っていますが、仕上げの程度もお客様の使用状況や時計に合わせてケースバイケース(ケースだけに)でやってまして、
今回のシーマスターのように時計を道具としてガッツリハードに使っている場合はしっかり仕上げ
上のロードマチックのようにややコレクション色の強いものや古いモデルの場合は、風防の小傷はしっかりとりつつも、ケースは軽く艶を出す程度に抑えてラインやエッジが崩れないように…というようにしています。

後者のほうが楽は楽なんですけど、ピカピカに磨く仕上げもこれはこれでまた楽しかったりします。

さてさて、明日はお休みをいただいていますので明日の更新はオヤスミです。
休み明けからはまた怒涛のクオーツノックです、ガンバルゾー!



今日は先日お預かりしたオリエントスターから始めます。
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お客様の懸念点は3つ
①巻きどまりがないこと
②リューズを引いたときの感覚が変
③1日30秒程度進む

①まず巻きどまりに関してですが、これは仕様としかいいようがありません。
オリエントスターはコストカットのために手巻きモデルにも自動巻き用のゼンマイと香箱を流用しているんですね、なので元から巻きどまりはあるはずないのですが…。
とはいえ、それをそのまま言ったところで芸がないので、ゼンマイ端の返しをさらに曲げることで強く香箱に押し付けるようにし、スリップの感覚が指先にまで伝わるようにしてみました。
これなら巻きどまりの感覚がわかりやすいと思うんですけどね。
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②機械式時計は、基本的に裏抑えの山状の部分をオシドリのピンが乗り越えることで、リューズを引く際のカチッとした接動感を出しています。ただし、このモデルではクオーツ時計のようにカンヌキとオシドリの凹凸がスレることにより接動感を出していますので、長年の使用によりこの凹凸がすり減ってしまっている可能性が高いですね。
今日の施工ではそこを見逃していたので明日またチェックします…。

③これまた明日への課題ですね。そもそもこのクラスのキャリバーに精度を求めるのは…ハックもついてないし…そういうことじゃないって?
ヒゲゼンマイを1時間ほど調整しましたがどうにも精度が安定しないんですよね…、テンプの振りもちょっと弱いんで一回全部見直しですね
ヒゲいじりすぎて頭がだいぶグチャグチャになってきたので慣れたキャリバー2つやって今日は終わります。

2本目ロレックスサブマリーナ(cal3135)
こちらはOHとベゼルが回らないのでそちらも合わせて、ということでした。
ベゼルの中も音波洗浄機でしっかり洗浄し、グリスを塗って無事回るようになりました。
逆回転防止ベゼルは非常にシンプルな造りになっていて、ベゼル下に仕込んであるL字型のバネが時計回りの時だけ”返し”として機能するんですね。ガラスの横にぴょこんと出てるのがそのバネです。
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OHは部品交換などなく終了、ロレックスは頑丈でいいですねぇ。

次!3本目フランクミュラーコンキスタッドー
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注)参考画像です
文字盤が湾曲しているんですが、それに合わせてカレンダーの上に文字盤の形に湾曲した厚いプレートが乗っかっています。それ以外はふつーのETA2892です。
ばらしていくと、輪列で完全にゼンマイのトルクがころされていたので、何かありそうだなぁと思ったんですが杞憂でした。
厚いプレートがのっかっているせいで四番車のホゾがやたら長く、流通パーツじゃ代用が不可能です。ダメになる前にメンテナンスしましょうね。

今回は通常のOHのみで大丈夫でした、精度調整してケーシングして様子を見ます。

明日はオリエントスターの再調整から始めます。またヒゲのいじりなおし…気が滅入るなぁ。

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