三井堂時計修理にっき

船橋市の時計屋三井堂(http://www.mitsuido.com)での時計修理の様子をお届けします。    修理の依頼、相談は(ikezaki@mitsuido.com)まで。

2019年06月

こんばんはーまずは
モーリスラクロアオートマビッグデイトから
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ETA2892ベースでビッグデイトモジュールが追加されているものです。
非常にテンプの振りが弱い状態でしたが…
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三番車についた出車から動力を経由してスモールセコンド化しています。
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秀逸なビッグデイト機構です。カレンダー板の上に歯が4つついたディスクを乗せ、その歯が上の十字型のディスクを一定間隔で送っていきます。
シンプルで故障のない機構です、素晴らしい。ムーブメントの外周にしかビッグデイトを表示できないのと、デイトの1の位と10の位に高さの違いは出てしまうのが難点といえば難点ですが。

ベースムーブメントのほうは油切れが深刻で,2番車のホゾが大分減ってしまっていたのでこちらは交換しました。その他は問題なさそうです。
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2892に限らずエボーシュをベースにモジュール(パワーインジケーターやビッグデイト、GMT)を追加しているものは一番芯、二番車、三番車から動力を経由させているものが多く、これらの部品は市販品とは異なった形状をしています。
万一ソレが摩耗して再利用不可能なレベルになっていても部品手配はできませんので、その手の時計はこまめなメンテナンスをお勧めします。

部品の洗浄を行って組み上げ、振角250度程度、歩度+10秒程度で調整中です。
スモールセコンドモジュールのせいでやや振りが弱いですがこんなものだと思います。
しばらくランニングテストします。

つぎ!カリブルドゥカルティエ
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一時期めちゃくちゃ流行りましたよねこの時計。搭載ムーブメントはカルティエ自社キャリバー1904-PSMC。
ツインバレルのマジックレバー式オートマチックです。

お預かり時にムーブメント上に鉄粉が大量に見受けられ、部品交換が必要であればメーカー出しということでお預かりしました。
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マジックレバーの油が乾き、そこから鉄粉が出ていたようです。ホゾのダメージは僅少だったので再利用可能と判断してそのまま分解を続けます。
というかマジックレバーへ注している油が軽すぎますよね…、セイコーなんかモリブデングリスべっとり塗ってますけどねぇ、やっぱりそれだけ摩耗する箇所なんだと思います。
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幸いほかの部分はダメージはありませんでした。
洗浄後調整してからベースムーブメントまで組んで振角300度弱、歩度も安定しているので明日カレンダー側を組んでケーシングまで済ませたいと思います。

それではまた明日!


こんばんは、まずはセイコーブライツレトログラードから
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クレドールのレトログラードは何度か紹介したと思います。基本設計は同じですがクレドールは金メッキが施してあります。
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扇状に配置された曜日を針が移動していき、日曜日から月曜日になるとき端から端まで針がジャンプする…まぁそういう機構です。そのジャンプのための動力源は内蔵された小さなヒゲゼンマイです。
ヒゲゼンマイを1、2週分縮めた状態で曜日車のカナを噛ませることでジャンプのトルクが生まれます。
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OHは10年前で油はすっかり乾いている状態でしたが部品の磨耗はほとんどありませんでした。
洗浄して組み上げ、振角250度程度、歩度+10秒くらいで調整中です。
久々にやりましたけどやっぱりちょっと面倒な機械です、次は半年後くらいでいいかな…。

つぎ!オメガ手巻きcal286
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いわゆる30㎜キャリバーです、天文台コンクールの参加条件がムーブメントの直径30mm以下ということで、その範囲内でめいいっぱい大きく設計されたムーブメントの総称です。
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ショックバネが少し特殊な形ですがその他癖もなく良い構造ですね。一番芯上部ウケの磨耗、二番ウケの磨耗を修正して組み上げ。振角280度 歩度は少し詰め気味で調整中です。
姿勢差もないので調整は楽そうです。

今日はHP更新や事務作業で忙しくここで終業でした。
明日はビッグデイトつきのETA2892から施工していきます。それでは!

おはようございます、久しぶりの更新になります。
ちょっと飛び石的な休みが多くまとまった仕事ができていませんでした。
数日分の仕事をまとめて更新です。

まずはオメガシーマスターのクオーツから
お急ぎとのことで早めの施工です。
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ブルガリみたいな上に金のプレートが載せてあるモデルです。はじめてみました。
見栄えか磁気対策かはわかりませんが下は普通のETAなのでさくっと…

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汚れが目立ったのはプレートのみで下はきれいなもんでした。洗浄してくみ上げて消費電流が規定値内なことを確認してケーシングしました。

つぎ、オメガスピードマスタープロフェッショナル
銀河鉄道999限定モデルなんだとか、裏蓋にメーテルの顔が笑
超音波洗浄したら一瞬で剥げそうなので蓋はそのままで…
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機械は後期型のオメガ1861、ロジウムメッキしてあるものは久々の施工な気がします。
ヒゲが磁気を帯びていたせいでテンプの振りが凄く弱弱しい状態でした。ヒゲの消磁を行ってから、一番芯下部、二番ウケの磨耗、香箱のアガキ、トランスミッションホイールと出車のかみ合いを調整しました。歯車の状態もおおむねよさそうです。

組み上げて振り角300度超、日差+3,4秒で稼動中です。

つぎ!フレデリックコンスタントオートマ(SW200)
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実はセリタは初めての施工です、このSW200はETA2824のジェネリックムーブメントになります。
セリタは販売当初はトラブルが多く、随分クレームになったと聞きましたが最近では品質も安定してきたそうです。中堅スイスメーカーは既にETAからセリタに移行しているところも多いですね。
これからもどんどん増えていくんでしょう。
IWCもセリタムーブメントを採用したことで話題になっていましたね。
ただ、今年の新作で自社ムーブ搭載モデルを60万くらいで販売していたので、今後IWCでセリタ搭載モデルが追加されることはないと思いますが…。
このことが示唆するのは…苦笑

さて、お預かり時では1日40から50秒遅れるとのことでした、テスターで測るとそのとおりの数値なので機械の状態としてはそこまで悪くなさそうですね。

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輪列には油はまだ十分にある状態で、部品の痛みはあまりありませんでした。
が、角穴の歯がかけていたのでそちらは交換してあります。ちなみにETA2824と互換性はありません。

組み上げて振り角300度超、現状日差+3秒くらいです。
しばらくランニングテストしていきます。

つぎ!セイコーソシエ手巻き
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小さいレディース手巻きながら21石です、ほぼすべての輪列にダイヤショックが使われており、かなりしっかりした造りであることがわかります。
ケース構造上、防塵性能が低いので多数の毛ゴミが輪列に絡んでいて動作の障害になっていました。

毛ゴミを取り除いたあと、一番芯上下の磨耗、香箱のアガキの調整をして組み上げ。
現状調子よく動いてくれていますが、剣送りの感覚がいまひとつなのでもうちょっと調整してみます。

今日はソシエのツツカナ調整からセイコーのレトログラードオートマへ続きます。
それじゃまた!

おはようございますー
まずはチョコ(ちょこっとした仕事)から
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中留のピン外れです。真ん中の棒は適当に切り出したステンレス棒です。
こいつを入れた上でステンレス半田を上下穴に隙間から流しいれて固定する作戦。

デフォルトの造りは詳しくは割愛しますが実質一か所でしか固定していないのでよく抜けます。
同じ方法でやっても芸がないし半田のほうが楽で丈夫なのでこれでいきます。

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おわり。時計の中身のほうは割とできるようになってきたので外装修理も修行中…です。労力の割にモーケが少ないですが…。所要時間2,30分。

つぎ!IWCポートフィノ(ETA2892)
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5年前にウチでOHしていました。複数の時計をローテーションで使っている方で油もまだちらほら残っていました。
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香箱の縦アガキが少し大きい以外は部品の磨耗もなく良い状態でした。
他人の仕事を見るのは勉強になります。
組み上げて振角260度超、歩度+10秒ちょっと切る程度で調整中です。

56GSとヴァシュロン手巻きの修正作業をして終業です。
休み明け木曜日は56もう1本仕上げる予定です。余った時間は未定、それではまた!

こんばんは
まずはノモスタンジェントパワーインジケーターつき
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初めての施工です。金色キャリバーの時でも改良型のコハゼ使ってたんですねぇ。
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インジケーターは小窓から見える色の割合によって残量がわかるようになっています。
ゼンマイがほどけるにつれて白から赤へ変わります。ノモスらしいデザインですね。

カレンダーは早送りなしで、21時くらいまで戻ってから0時をまたぐと再日送り可能です。
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特に部品の痛みもなく通常のOHで大丈夫でした。振角300度超え歩度+10秒で調整中です。

で、間にちょっとした仕事をば…
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中留のバネ交換でお預かりでした。中でバネが破断していてうまく機能していませんでした。
サイズが特殊なバネなので合わせるのが大変でしたが、ツブシのクロノグラフのプッシャーバネがちょうどよいサイズだったのでそれを使いました。

つぎ!パテックフィリップオートマ(cal27-460)
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OHでお預かりです。
ローターはもちろん18金無垢です。ペラトン系のオートマチック機構採用です。
ペラトン式はゼンマイが満タンに近づいてくると巻き上げ効率がかなり落ちてくるので、そのための無垢ローターなんでしょうかね。
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素晴らしい機械であることは言うまでもないんですが、特に耐摩耗性に関して設計レベルでかなり意識していることがよくわかります。
ペラトン式オートマチックの採用もそうですし、裏抑えも特殊で従来のオシドリの上に乗せる裏抑えではなく、並列に配置された裏抑えをオシドリ全体で超えることでリューズ操作の感触を生み出しています。
そうすることで裏抑えの腕が折れるリスクがなくなりますよね。コハゼの裏にも人工ルビーが埋め込んであり、意味があるのかはわかりませんがとにかく抜かりがありません。
販売コンセプトである子孫に受け継いでいく時計というものを設計ベースで意識しているんですねぇ。
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油切れと二番車の赤サビ以外は概ね良い状態でした。洗浄して組み上げて振角300度超、歩度は+2秒程度で調整中。しばらくランニングテストします。

余った時間で古いデイトジャストの巻きブレスのコマ調整をして終業です。
休み明け月曜日はIWCポートフィノから施工予定です、それじゃまた!


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