三井堂時計修理にっき

船橋市の時計屋三井堂(http://www.mitsuido.com)での時計修理の様子をお届けします。    修理の依頼、相談は(ikezaki@mitsuido.com)まで。

2019年08月

こんばんは
まずはシチズンアセンダクオーツから
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中身はエクシードにも使われていたものと同一のものだと思います。
最安値でOHを引き受けてしまいましたが、よくよく見たらケースも金無垢でどうやら高級ラインだったようです。
ちょっと不勉強すぎました、検索してみるとシチズンのHPに当時の価格も一緒に掲載されていました。
というかシチズンのHPすごいですね、歴代販売モデルが全て掲載されています。どこぞのSの字とは偉い違いだ…。気になった方は CITIZENのキセキで検索してみてください。

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閑話休題。
秒針がぴくついて動かないということでお預かりでした、電池残量と症状的にOHをお勧めしました。
油切れと四番カナ下の汚れが顕著でした。
洗浄して組み上げて消費電流1.5μA→0.89μAへ。
パッキンの劣化で防水が効いていない状態だったのでパッキンを新しく手配しているところです。
針付けまですませて入荷待ちです。

つぎ
IWCインヂュニアクロノ
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半年前のOHですが手巻きが重いときがあるということでお預かりです。
使用状況について詳しく伺いましたがちょっと手巻きをしすぎかなと…。案の定他部分はキレイなのに切替車周辺に少し鉄粉が散っていました。
念のため切替車の交換と、過度の手巻きでややスリップ過多になったゼンマイを調整しました。
巻き上げ方式によって効率の差はありますが、基本は腕につけていれば止まらないように設計されていますので、停止状態から動き出しのきっかけを与える以外で手巻きの必要はないと考えます。

切替車は、手巻きする際はローターの回転と切り離して高速回転するので、本来のローターの回転に合わせてゆっくり回る動きとは摩耗の進行具合も段違いです。

ケーシングして現在ランニングテスト中です、丸穴回りのグリスも少し乾きづらいものに変更、切替車交換と合わせて巻き上げ感の改善につながったかと思います。
2週間くらい動かしてから連絡予定です。

最後はコルムアドミラルカップクオーツ
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オメガのレディースなんかにも使われているモデルですが、すでに製造中止でムーブメントの在庫が減ってきているらしいです。
安易にムーブ交換すればいいかと思いましたが、そんな事情で値段は高いわカレンダーは3時窓だわでアレだったので大人しく磨くことにしました。

洗浄して消費電流も適正値になりました、ケースが乾いたらケーシングします。

明日はエニカのオートマハイビートあたりから施工予定です、それではまた!








おはようございます。
まずは61グランドセイコーハイビート
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10振動36000回転です。
香箱にdon't openと印字があります、そのたぐいの印字があるモデルは国内外に幾つかありますが、61に関しては蓋をキツくかしめてあるのでcan't openといった感じです。
メーカーでは香箱一式での交換前提の設計だったんでしょうが…50年後にメンテナンスする側としては部品もありませんので50年分の汚れを洗うために無理くりにでも開けるしかありません。

一番芯を中心に香箱の蓋もひどく歪んでしまうのでその後調整も必要になります。
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さて、その他部品の状態は2番のアガキがまったくない状態だったので適正なアガキを作りました。
それに伴って4番のアガキも作り直してあります。

組み上げて振角250度、姿勢差もなく良い状態です。しばらくランニングテストしていきます。

つぎ!
ゼニスエリート680
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ゼニスの自社ムーブメントエリートです。
1994年の開発当初ベストムーブメント賞をとったムーブメントです。ちなみに2位はGP3000です。

エルプリメロと比べるとカレンダー機構やオートマ機構に改良が見られます。
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8年前のOHで不動になってからお持ち込みです。
原因はテンプ上部の穴石外れです。ただしメンテナンスから長期間たっていることもありタイミングとしてはよかったと思います。
案の定ウケを外すと細かな鉄粉が散っていました。動作に影響を及ぼすほどの量ではないですが確実に部品の磨耗はしていると思いますので。
各部品をチェックしましたが幸い交換の必要なほど摩耗している部品はなく一安心です。
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裏抑えの下にカレンダー早送り車が内蔵していたりちょっと設計にクセがあります。
そこもマニュファクチュールらしさということで…。

組み上げて振角300度弱、歩度も安定しており申し分ないと思います。
カレンダーの動きを確認して針付けをおこないたいと思います。
それではまた!








おはようございますー。
ちょっとバタバタしていてあまり仕事のほうが進んでおりません。

まずはオメガダイナミッククロノ
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calは1138。
12時間積算計が廃されたツーカウンタークロノです、1990年ごろのモデルでしたっけね。
お預かり時にクロノセンター針のリセットがまったくきかないことを確認済です。
面白そうなので私がやることにしました。

普段はSPM手巻きを使っていてあまり使っていないというお話の通り、ベースキャリバーの状態は非常に良好でした。ネジの曇り一つなし。
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一番芯上下のアガキだけまったくない状態だったので、こちらはウケの金属枠を動かしてアガキを作りました。
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続いてクロノモジュール、こちらも非常にきれいな状態です。
クロノセンター針を外す時にかなり感触が緩かったので、リセット不良はハカマが原因とあてこんでとりあえずは通常通りにOHしました。
…が、やはり同じように不具合が出てしまいます。
リセットテンションをかけちた状態でクロノグラフホイールを観察すると、30分積算計はしっかりハンマーが届いていて60秒のほうは届いていない状態でした。

この機械はハンマーで3点(今回は2点)同時にリセットをかけるんですが、ハンマーの具合でそれがずれることがあります。
今回はそのケースでした、何回か調整して同時に且つ同様の強さでリセットがかかるように調整しました。
ベースキャリバーを合体させて現在ランニングテスト中です。

つぎ!モーリスラクロアビッグデイト(ETA2892ベース)
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2か月前にOHしたモーリスラクロアですが雨天時に使用し水が入ってしまったということでOHです。
再度防水検査しましたが規定水圧の50M防水はクリアしていましたので、そのままOHです。
巻き芯回りに少しサビが出ていたので除去してから分解していきます。
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特に調整箇所等もなくOHして終わりです。ケーシングして現在ランニングテスト中です。

木曜日は61GSの調整とゼニスエリートの施工予定です。

おはようございます。
まずはロレックスデイトナ(cal4130)から
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今月2本目のデイトナです。着けているだけはゼンマイが巻き上がらずすぐ止まってしまうとのことでお預かりです。
ベアリングに少しガタが来ていますが許容範囲のレベルなので(というか交換できないと思いますが…)このまま再利用します。
その他オートマ関係の部品と二番車に痛みが見られました。幸い交換対象とまではいきませんがやはりここらへんからガタがキ始めるようです。
完全に摩耗してしまう前に時計自体が稼働しなくなるのは偉いですね。交換レベルにまで摩耗してからだと修理金額も大変ですからね。
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先日やった4130とは歯車の造りが少し違います。
今回のものは旧型、前回のものはクラッチ回りの歯車が立体構造になっていてクロノ作動時の歯へのダメージの軽減やスムーズさに寄与しているものと思われます。
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組み上げて振角270度程度、部品にダメージがある分すこし元気がないですがこんなものでしょう。
秒針と長短針だけつけて現在稼働チェック中です。問題なければクロノの作動チェックに移ります。

間に水入りのオメガ手巻きを挟んでから
ジラールペルゴヴィンテージ1945パワーインジケーター(cal3300)
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定期的なメンテナンスでお預かり。
インジケーター針が不動ですが治らなくても構わないとのこと。
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インジケーター自体は非常にシンプルな造りです。香箱真から延びるカナと中間車、トルク変換用の一体成型の歯車の3つの部品で構成されています。
洗浄前に軽くホゾに油をさすとちゃんと動いたので恐らくただの油キレによる不動でしょうが、カナの欠けや歯車の軸の磨耗があったりすると動作が不安定になる場合もあります。
あとで詳しくチェックしてみます。
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輪列配置はスモールセコンドが9時位置にあるので少し特殊です。

時間切れでここまでバラして終業時間だったので続きはまた今日からやっていきます。
それでは!

おはようございます。
まずはルイヴィトンオートマGMT(ETA2893)
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2892をベースにGMT機能を追加したものになります。GMT針の早送りの動きがしぶいということで調整希望です。
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直接GMT車を送っていくのがベリリウムカッパー製の部品です。
これはロレックスGMTマスターと同じように、中心軸の凹凸を横付けのバネが乗り越えることで早送りの節度感を出します。
この凹凸部とバネ部の間の油が乾いた結果動きのしぶさが出ていたようです。洗浄と注油で動きの滑らかさが戻ったのでベースキャリバーを施工していきます。
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OHは8年前のようですが結構ハードにお使いのようで歯車にかなり摩耗が見られました。
今回は再利用不可能な切替車と2番車のみ交換して、他の部品は研磨で再利用しています。
組み上げて振角280度超、歩度はこれから調整していきます。
ヒゲゼンマイの調整をしたんですがまだちょっと姿勢差が出ている状態です、もうちょい調整していきます。

つぎ、フランクミュラーオートマ(ETA2892)
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アフターダイヤモデル、他所でみつもりした結果修理不可とのことで返却されたそうです。
施工前に文字盤のサイクロプスレンズの接着、ベルトのネジ抜きネジ造りを行っています。

動いたり止まったりとのことですが…
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原因は4番車のアガキがまったくないことによるものでした。
人工ルビーのウケ石を動かして適切なアガキを確保しました。
他の部品は意外にもコンディションが良く、すべて再利用可能でした。
ちなみにローターに彫ってあるローターセグメントプラチナなんたらはローターの外周部分にプラチナ使ってますよということらしいです。
一応巻き上げ効率に寄与しているとか、巻き上げ系に負荷与えるだけとか賛否アリマス。

さて、組み上げて振角290度超。良いコンディションだと思います。
アフターダイヤモデルはクリアランスの関係で針つけに無理が生じる場合が多いですが、FMの場合は湾曲した文字盤でデフォルトの針のクリアランスにかなり余裕を持たせているので結構すんなり行きそうです。
今日出社して精度調整が済んだら針つけとケーシング予定です。

それではまた!

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