三井堂時計修理にっき

船橋市の時計屋三井堂(http://www.mitsuido.com)での時計修理の様子をお届けします。    修理の依頼、相談は(ikezaki@mitsuido.com)まで。

2021年05月

こんばんは三井堂です。
まずはセイコーキングクオーツ(08系)から
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古いセイコークオーツです。
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人工ルビーの爪
四番車を横から規制し、インデックスに対して正確に運針するようにしています。
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例によって噛み合いを調整できるようになっており、微妙な調整が必要らしいです。
この個体はバネが反るくらい強かったので後で調整していきます。
バネが弱いと秒針が滑り、強いとすぐ止まります。

ステップローターとステーターがモジュール化されている珍しい構造です。
ステーターの歪みは動作不良に直結するのであまり嬉しくないですが…
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文字盤側もかなり凝った構造です。
裏抑え回りなんかは独特です。
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軽い錆の粉などや鉄粉などの混入以外は概ね良い状態だったと思います。
ちょっと入り組んだ構造なので少し組み立てに手こずりましたが問題なく稼働するようになりました。
四番規制バネを弱めにセッティングしなおして1秒の狂いもなく稼働中。
超音波洗浄を済ませたケースに収めてもうしばらくランニングテストしていきます。

つぎ!オーデマピゲコブラオートマ(cal2121)
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リューズ交換と分解掃除でお預かりです。
リューズ合わせのためにローターは既に外しています。
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ベースムーブメントはルクルト製cal920
スイッチングロッカー式の自動巻きで非常に薄い造りです。
ローターのクリアランスがギリギリの為、外周には4つの人工ルビー製のローラーを配し、地板への接触対策を行っています。
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カレンダーのジャンパーも薄さのために地板側に軸などを造らず、ジャンパーに人工ルビーを取り付け、カレンダーウケ側の切り欠きを動くという仕組み。
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幸い通常の分解掃除のみで対応可能でした。
部品交換が必要になるとちょっと大変かもしれません。
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ケースに収めてローターをクリップで取り付けたところ。
分解掃除後振角260度、歩度+7,8秒で調整中です。

つぎ!IWCポルトギーゼクロノグラフ(cal79350)
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パタッと止まってしまったということでお預かりです。
この縦2つ目のIWCが止まったら、ゼンマイやネジ外れ以外での原因はほぼスモセコモジュールに起因すると言っていいと思います。
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秒カナが飛ぶのを防止するようの板ばねの油が乾くと一発で止まります。
その証拠にモジュールを取り外したらすぐに動き出しました。
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そのほかの摩耗箇所や調整不足箇所はありませんでした。
今日はバラシと洗浄まで行って組み立ては明日に回します。
それではまた!





こんにちは三井堂です。
まずはボームアンドメルシエクラシマクロノ(ETA7754)
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通常の7750から秒針をオミットした縦2つ目モデル
センターに24時間計が追加されています。
あまり見たことがない短針早送り用の歯車が追加されています。
デイトがないモデルであれば、7751のセンターのポインターデイト用の歯車で簡易的にGMT機能にできたりするのですが…。

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表側はいつもの顔、中の4番車はカットされて短くなっていますが。
裏スケではないですが綺麗に仕上げがされています。

今回はゼンマイ切れというこで分解掃除と一緒にお預かりです。
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みたところ油の乾ききった様子もなく綺麗な状態でした。
一番芯のアガキが微妙に不足していたので調整してあります。
ゼンマイ切れによる歯車の痛みなどもありませんでした。

分解掃除を行って振角300度、歩度+10秒弱で調整中。
短針早送りも軽すぎず重すぎずちょうど良い塩梅の重さです。バネのヘタリや折れが多い機構なので注意が必要です。

つぎ!セイコー鉄道時計クオーツ
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5石のクオーツ
昔のクオーツ式の鉄道時計です。
厚みがあり丈夫で好きな機械です。
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内部には輪列ウケ用のスペーサー以外プラスチック部品が使われていません。
だからこそ4、50年近く経っても使えるのだと思います。
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分解掃除を行って正常に動作するようになりました。
風防にはややクラックが入っていますがまだまだお使いになれると思います。

そういえば先日ヤフーニュースのトピックでセイコーの部品保有期限が10年間である、ということで界隈で話題になっていました。
一生もので購入したのに10年じゃ心もとないということでした。
グランドセイコーの耐久性を考えれば、部品供給がない以上いずれはメーカーに頼らなければならないタイミングが出てくると思いますが、保管にもコストがかかる以上難しいところです。

ヒゲゼンマイからなにから全部自社で作ってるわけですから、仮に部品がなくなっても、スイスの永久保証メーカーのように部品別作しつつできないことはないと思うんですよ。

ただしじゃあ分解掃除と部品別作で20万円です!となって納得して払うユーザーが今のGSに付いているのかというと微妙なところですよね。
それをメーカー側も分かっているからそういう方向にシフトしきれていないと思うんです。
オメガやロレックスなども古い時計に対するメンテナンス体制を拡充していっているので、GSもこれからどうなっていくか気になるところです。

つぎ!オメガシーマスター300m(ETA2892)
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分解掃除でお預かりです。
前回の分解掃除は5年前です。リューズのねじこみがかなり浅くなっていますが今回はそのままということでオーダーいただいています。
ねじこみは浅くなっていますが防水はしっかり効いています。

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油はやや乾き始めていました。
分解掃除のタイミングとしてはベストです。
香箱の縦アガキを微調整してくみ上げ、振角精度ともに申し分ないです。
研磨を行ったケースに収めてランニングテスト中です。

つぎ!セイコー鉄道時計手巻き(cal6310)
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不動の状態から分解掃除スタートです。
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湿気の混入、一番芯上下の摩耗が見られました。
清掃と補正でこちらはどうにかなりました、が天真の丈夫軸が摩耗していて分解掃除後に裏平でうまく精度がでてくれません。
アガキの調整だけではどうにもならないレベルなので天真別作ですね…。
料金が追加になってしまうので休み明けにお客さんに相談の電話をします。

休み明け木曜日はまた納期の近いものから施工していきます、それではまた!










こんばんは三井堂です。
まずはオメガコンステレーションcal711
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オメガの古いオートマです。
裏蓋ネジが2本錆びて固着しており、裏蓋ネジのネジ抜きと新規造りを終えてからのスタートです。
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幸い中の機械には錆は出ていませんでした。
オメガの古いオートマでは相当薄い部類だと思います。
2番車がオフセットされたムーブメントで、文字盤側にはマサツカナがセットされています。
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ヒゲゼンマイに多少の調整をしましたが概ね良い状態でした。
組み上げて振角300度、歩度+5秒程度で調整中です。
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2892と同じくらいかそれより薄いくらいの厚みです。
現在研磨したケースに収めてランニングテスト中です。

つぎ!ロレックスデイトジャストレディースcal2135
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ちょっと古めのレディースのロレックスです。
OHとゼンマイ交換
お預かり時に切替車が摩耗していてカムが時々引っかかっていたので、交換が必要かどうかお見積りします、ということでお預かりしました。

摩耗率70%くらいで一応再利用はできるという結論だったのですが、お客さんのご希望で交換することになりました。
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切替車以外のパーツは大丈夫でした。ゼンマイによる歯車の破損等もないです。
ヒゲゼンマイの偏心の調整、ツツカナのかしめなおしを行って組み上げ。
振角290度、歩度+5~8秒で調整中。

つぎ!オーデマピゲ手巻きcalK2002
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ジャガールクルト製の手巻きムーブメント搭載
文字盤リダンと分解掃除でお預かりです。
リダン完了までは大体3か月くらいかかることが多いのですが、珍しく早く上がってきたので施工していきます。

古いケース構造なのでウケには少し湿気の影響が見られますが、歯車やヒゲゼンマイなどに錆は見られませんでした。
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ロービートなので摩耗らしい摩耗などもなく良い状態でした。
組み上げて振角300度弱、歩度+7秒くらいで調整中。この機械にしては珍しくかなり振りが出ています。
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ガラスの傷が少し目立ちますが、文字盤は綺麗に仕上げてくれたと思います。
ところで、リダンの工程で、インデックスを一回取り外して文字盤を書き換え→インデックスを再度取り付けするため、インデックスはオリジナルよりほんの少し浮いたような状態になります。
普通の機械だとあんまり考慮しなくても良いですが、薄型の機械だとその分長針秒針のクリアランスがシビアになるという新たな気づきがありました。

上手く高さの調整はできたと思いますが、針当たりが無いように注意して動作チェックしていきたいと思います。


最後に先日お話したK18WGケースのコンステがそろそろ仕上がりそうなので先にお披露目です。
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貴金属ケース+オイルレザーの組み合わせはかなりお気に入り
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ヘッドだけでもかなり重量あります。
外装と機械の細部をもうすこし詰めたら販売予定
値段は…悩み中です。

明日はボーム&メルシエのクロノとセイコーのクオーツ懐中あたりの施工です。
それではまた!





こんばんは三井堂です。
まずはタグホイヤーカレラクロノ(ETA7750)
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非裏スケモデル
簡素な仕上げのETA7750です。
恐らく初の分解掃除で針が非常に硬く入っていました。
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久々の7750
所々鉄粉が出ていましたが致命的な摩耗はありませんでした。
一番芯のアガキの調整、ヒゲゼンマイの調整を行いました。
組み上げて振角280度、歩度+5秒で調整中。

クロノの機能も問題ありませんでしたが、針のハカマに緩みが生じていたのでかしめなおしてリセット時にずれないようにしてあります。

つぎ!ロンジン懐中時計
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先日分解掃除と針直しでお預かりしたものです。
既に針の曲がりは直してあります。
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機械は二番車とそれを受ける側にかなりの摩耗が見られます。
この手の懐中時計はどうしても二番が減ってきます。

段差がつくほどホゾが減っていたのでまずは段差をなくす意識で研磨
それに合わせてウケる側を穴詰めしました。
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かなり綺麗に穴を詰められたと思います。
調整した穴を綺麗にスムージングしなおしてエピラム処理をかけたところです。
その他ヒゲゼンマイの状態、他歯車など良い状態だと思います。

組み立ては休み明け木曜日に行います。それではまた!


こんばんは三井堂です。
まずはピアース手巻き(ETA2512-1)
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二針の手巻きムーブメントです、カルティエなんかにも過去使われていた機械です。
綺麗な仕上げが施してありグレードが高そうです。
不動ということで修理を検討されていましたが、ケースが無垢で中の機械の素性もよかったことから修理をお勧めしました。
文字盤もラピスラズリ文字盤で手のかかったものでした。
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機械をばらしたところ
3番車のホゾが減っていて交換が必要な状態でした。幸い部品ストックがあったので無事交換できました。
他部品の摩耗などもなく、通常通りの分解掃除で対応可能でした。
振角270度、歩度+10秒で調整中です。

つぎ!オメガレディース手巻きcal620
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cal625の前身
625になると受けが一体化して3/4プレート状になってしまうんですが、620はウケの分け方が非常に美しくて良いですね。
高級機に寄せた感じになっています。
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各部品のチェックを済ませてばらしたところ
オメガの小径手巻きは華奢な造りに見えて丈夫でよく精度が出ます。
振角250度、歩度+10秒で調整中。
ケース研磨と洗浄を終えたケースに収めてランニングテスト中です。

つぎ!オメガシーマスター120M(ETA2892)
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cal1120
ETA2892ベース、伝え車を受けの上から取り外せるようになっているのが2892との違いでしょうか
長年ノーメンテナンスだったとのことです。
パット見た感じは深刻な不具合、摩耗はありませんでしたが…
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一番ウケを裏返したところ
左から2番目に位置する丸穴車を受ける軸部、ラグビーボール状の軸が少し摩耗が始まっています。
ここの摩耗が進行していくと、手巻きの際に中間車との連結が外れて巻けなくなります。
優れた設計の機械ですがここが唯一のウィークポイントでしょうか。
今回はまだ再利用範囲ですがやはり少し手巻きにざらつくような感触が出ます。

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他の部品はすべて問題ありませんでした。
使っていた年数に比してまずまず良い状態だったと思います。
あとは定期的にメンテナンスして一番ウケを労わっていただいて…
シーマスターなのであまり手巻きする機会もないと思いますが、手巻きを控えめにすることで症状の進行を抑えることができます。

組み上げて振角280度程度、歩度+5秒で調整中です。
今日はここまでで終業でした。
明日はタグホイヤーカレラクロノの施工からです。
それではまた!

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