三井堂時計修理にっき

船橋市の時計屋三井堂(http://www.mitsuido.com)での時計修理の様子をお届けします。    修理の依頼、相談は(ikezaki@mitsuido.com)まで。

2021年09月

こんばんは三井堂です。
火曜日はワクチン接種の為お休みをいただいていました。

今日はスケルトンのジラールペルゴオートマクロノの施工でした。
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針と本剣車を取り外したところ
ややこしそうに見えますがバラしていくと意外とすんなり頭に入る構造でした。
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モジュール形式になっておりベースのムーブメントと分離できる構造になっています。
スケルトン化を意識してか、普通のクロノムーブメントではネジ止めしない部品もしっかりネジで固定してあります。
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本剣と永久秒針はそれぞれ違う歯車から動力を経由しているのは少し特殊かもしれません。

本剣は二番車に取り付けられたマサツカナから
永久秒針は三番車からカナを伸ばして動力を経由しています。
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ベースになっているムーブメントはいつものGP3000系です。
小径で綺麗に纏まっているムーブメントです。
機械はクロノグラフ部分に少し油切れによる赤錆が出ていただけで概ね良い状態でした。
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本剣車のアガキを調整して文字盤、針ツケまで終えました。
明日ケーシングと精度調整まで行う予定です。

その後はオメガのcal8500系のコーアクシャルムーブメントと古いセイコーのクオーツへ続きます。
それではまた!

こんばんは三井堂です。
今日は3本立てです。
アメリカ在住の方からのご依頼です。

まずはロレックスデイトジャストref16234
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急に止まりがちになったということでした。
手巻きの感触がかなり重く自動巻きユニットの油がかなり乾いているようでした。
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油の乾いた痕、以前の注油量も少ないように見えます。
幸い部品の摩耗はありませんでした。

ただし事前に伺っていた針の上の油の原因に関してはイマイチ判然としませんでした。
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短針と長針が刺さる歯車の擦れる部分には注油しますが、そこから油がはみ出して針まで流れていくというのは通常ではあまり考えられませんが…。
針の上に乗っていた油は綺麗に除去したものの長い間針の上に残留していた為、長針のメッキ層に少し痛みが出ていました。

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機械部分は自動巻き部分の油切れ以外は良い状態でした。
通常の分解掃除を行って振角300度、歩度+5秒弱で調整中。

ガラス縁のテフロンパッキンとゴムパッキン3本を交換して、100M防水も確保しています。
もうしばらくランニングテストしていきます。

つぎはセイコー5アクタスSS6106C
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手巻き機構がオミットされた61系キャリバー
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リューズを軽く押し込むと日付の早送り、強く押しこむと曜日が早送りできます。
強力なバネで駆動するので重めのグリスを塗布します。
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ゼンマイが格納される香箱を受ける地板の穴
香箱は時計周りに回転するので穴の右上に摩耗が生じます。
タガネという棒状の工具で穴を叩いて、回りの金属を寄せて穴を詰める作業で対応します。
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下部が摩耗して平行に回転しなくなるとウケにこすりながら回転してウケや香箱にも擦れた痕が生じます。
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オートマ伝え車のウケ石が割れていたので交換しておきます。
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ウィークポイントである香箱回りをしっかりケアしてあげればまだまだ現役で使える機械です。
OHを終えて稼働状況は非常に良好です。
日差数秒程度で稼働していますがもう少し様子を見ていきます。

つぎはロレックスオイスター手巻きref6426
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出車式センターセコンドタイプの手巻きムーブメント
オーダーを頂いて仕入れたもので仕上げ作業を行っていきます。

来歴などはわからなかったのですが、ネジも綺麗で錆などもなく素性の良いものだと思います。
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歯車も非常に綺麗で殆どデッドストック品のような感じですが、二番車のアガキが過大だったのでメタルを下げて調整しました。
ゼンマイも末端部に折れ癖が出ていたので新品のものに交換してあります。
出車の平ブレ、秒カナ抑えの歪みも修正して分解掃除。
振角270度弱、歩度±10秒程度で調整中です。

パッキンなども交換して5気圧防水を確保してあります。
稼働時間、精度ともに好調です、もう少しテストを行います。

休み明け月曜日はツインバレルのカルティエオートマを施工予定です。
それではまた…!

追記
以下は今回のご依頼いただいたお客様からのコメントです。
ライブドアブログの仕様か、海外からはコメントできないようですので転記させていただきます。


投稿者名: ロサンゼルス在住の、今回の三点の依頼主。

下記が、先ほど投稿しようと思った原稿です。

 

10年かけてアンデスを縦断するんだと息巻いて22才の時に単身で日本を出る直前に、会社から勤続25年記念でもらったばかりの時計を、おそらくは複雑な気持ちで父がくれたのがセイコー5(自動巻き)でした。 人生二番目の時計です。 46才の時、距離計が100マイル(160万キロ)に到達するまで大事に乗ると誓ったランドローバーを70万マイル(112万キロ)弱で手放さなければならない事情が生じ、その代わり肌身離さず身に付けられるものに替えようと、売った代金で買ったのがロレックスデイトジャストRef16234(自動巻き)。 人生三番目の時計です。 体を動かす仕事をまだ現役でしていますが、いつまでもスーパーマンを続けられる訳がありません。 いずれは手腕の動きも鈍り、自動巻きでは正常に稼働出来にくくなります。 そこで、今回三井堂さんに頼んで探してもらったのがロレックスオイスター手巻き。 これが四番目、人生最後になる腕時計です。 今の内に時々肌に着けて使用し、毎朝巻くのが楽しみになります。 人生最初の時計はと言えば、前述した半世紀前に日本を離れる頃に紛失行方不明になってしまい、思い出す度に今でも痛恨の極みとなっています。 それは、Citizen Deluxeの手巻き。 1958年前後に作られたものらしく、針が金色だったことくらいしか記憶にありません。 腕時計人生は手巻きに始まって手巻きに帰ります。 科学的に言えば、すべての生き物は例外なく有機物です。 時計は金属という無機の部品を組み合わせて作られている完全な無機物でありながら、‟生きている”ことを感じさせる不思議な無機的生き物です。 

三井堂さん、今回は三個の個体の分解・掃除・洗浄・注油・組み直し、有難うございました。


おはようございます、三井堂です。
まずはアクアタイマーの続きから
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12時間積算計とカレンダーは恙無く組み終えました。
7750の曜日ディスクは横の位置決めのバネ+上に薄い金属のプレートを載せることで固定します。
セイコー含め他メーカー等はCリングでしっかり固定するのに比べるとやや頼りない印象です。

組み終えて振角300度超、歩度+2秒程度で調整中。

つぎ!ロレックスシードゥエラーcal3135
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分解掃除と手巻きの違和感ということでお預かりです。
輪列にはちらほら油が残っていますが、オートマユニット他内部の油はかなり乾き気味でした。
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部品にはほぼ摩耗は見られず分解掃除の良いタイミングだったと思います。
切替車ホゾ部にも油切れに伴う軋つきが見られたのでギリギリセーフでした。
一番芯のアガキも不足していたので調整と分解掃除を行いました。
洗浄と注油でスムーズな手巻きの感触も戻りました。
文字盤と針ツケまで終えてあるのでケースの仕上げをまってケーシング予定です。

つぎ!ブルガリディアゴノスクーバETA2892
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先にバックル中留部のバネが折れているので交換します。
かなり細いバネなのでやや耐久性が弱そうですが分解可能な構造でよかったです。
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機械部の分解へ
機械はベーシックなETA2892、ブルガリも今やセリタムーブに移行しているので今や貴重かもしれません。
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ゼンマイ交換ということでお預かりしていましたが、手巻きの感触が少し重かったので手巻き関係の部品の摩耗を疑っていました。
特に2892は一番ウケ裏の丸穴車軸部の摩耗が酷く進行している個体があります。
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杞憂だったようです。
油は完全に乾いていますが摩耗まではしておらず綺麗な状態です。
香箱は洗浄を行い、少し痛んだ内壁にはブレーキンググリスを塗布してケアしました。

今日はベースムーブメントまで組んだところで終業です。
手巻きの感触もいつも通りの感触に戻りました。
アンクルの注油まで済ませてあるのでオートマユニットとカレンダー部を残すのみです。

休み明け月曜日はブルガリからセイコーオートマ、デイトジャストへ続きます。
それではまた!

こんばんは三井堂です。
まずはオリス手巻きから
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FEの手巻きムーブメント搭載、おそらくオリジナルだと思います。
ゼンマイが切れていたのでゼンマイの交換と分解掃除でお預かりです。

ゼンマイのサイズの合うものが海外から取り寄せで一か月ほどかかってしまいました。
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ゼンマイ切れによる部品の破損などもありませんでした。
購入にしてからノーメンテということでしたが非常に良い状態でした。
ヒゲゼンマイだけはかなり変形していたので念入りに形を修正しておきました。

分解掃除を行って振角270度弱、歩度0~+5秒程度で調整中です。
精度と稼働時間のチェックを行っていきます。

つぎ!ロレックスデイトジャストcal3135
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稼働不良ということでお預かりのロレックス
ローター真に油の乾き、切替車もやや軋むような感触がありました。
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油も十分に残っている状態でオートマユニット下は特に問題ないようでした。
主ゼンマイも新しいものが入っていたので、取り出して香箱内壁にグリスを塗布した後に巻きなおして再利用しています。
振角280度、歩度0~+2秒程度で調整中。
しばらくランニングテストを行い稼働状況を念入りにチェックしていきます。

つぎ!IWCアクアタイマーETA7750
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カレンダーの曜日が半目になっているということで、そこの直しと分解掃除でお預かりです。
曜日の不具合はディスク自体か送り車の破損と当たりを付けていましたが、どちらも大丈夫でした。
位置決めのバネが弱くなっていたので、保持する力が弱くなり浮いてしまったのだと思います。

ベースもバラしていきます。
クロノグラフの部品も湿気の影響などは受けておらず綺麗に艶がのこっています。
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通常の7750と比べると緩急芯がトリオビスタイプに変更になっているものの、減りやすい一番芯受けにはメタルやルビーの追加等はありません。
例によって上部に少し減りが見られたので穴詰め作業を行いました。

今日は機械側だけ組んだところで終業時間でした。
明日12時間積算計とカレンダーを組みます。
それではまた!

こんばんは三井堂です。
レベルソcal854ですが二番車に著しい摩耗があり、動作に支障があるため交換用部品を探しましたが手配できず…
残念ながら今回はメーカーでの修理になりました。
ベースの822もそうですが部品が市場に一切出回ってないのでなかなかキツイです。

気を取り直して
セイコーローレルクオーツcal2F50
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久々の施工です。最後にやったのはおそらく1年以上前だと思います。
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ところせましと歯車が重なり合ってレイアウトされています。
薄型化のためにツツカナ車、剣座、本剣車まで機械側にセットされているので非常に組みづらい機械です。
バラしてみると剣座と本剣車の間にべっとり油が伸びていました。
消費電流の割には電池の持ちが悪いのはここら辺に原因がありそうです。

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部品にかなり磁気を帯びていたので磁気抜きと分解掃除を行いました。
これだけ歯車があるのでウケを載せるのに毎度苦労するのですが、今回はめちゃくちゃあっさり行きました。
運がよかったのか腕がよくなったのか!?いずれにせよクオーツに埃は大敵、作業時間は短いにこしたことはありません。
さっと組み終えて針ツケ、消費電流は分解前より少し低下して0.12μAほどになりました。

つぎ!ロレックスデイトジャストcal3135
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水入りの個体
お使いになっている方からお話が聞けなかったのですが、お持ち込みの状態でリューズはリリースされていました。
防水検査するとリューズを締めた状態なら防水は効きましたが、念のためパッキン3点交換しました。
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軸の部分に摩耗が進行しています。
もしかしたら切替車の摩耗で巻き上げが不足しがちになり、リューズを緩めて手巻きや時間合わせを行いリューズを締め忘れて浸水…というパターンかなと。

いずれにせよ交換は必要な状態なので了承いただいて部品を手配しました。
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幸い機械には錆の影響などは出ていませんでした。
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切替車待ちの状態でここまで組んでおきました。
振角260度程度
切替車がきたらオートマユニットとカレンダー回りを組んでいきます。

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写真を撮り忘れてしまったんですが2階建てクロノの施工も行っていました。
こちらはリセットの不具合などもなくすんなりと分解掃除が終わりました。
ベースムーブメントと合体させて振角300度、クロノ作動時で280度と好調です。

今日はここまでで終業でした。
休み明け木曜日は古いオリスの手巻きあたりぼちぼちやっていきたいと思います。
それでは!




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