三井堂時計修理にっき

船橋市の時計屋三井堂(http://www.mitsuido.com)での時計修理の様子をお届けします。    修理の依頼、相談は(ikezaki@mitsuido.com)まで。

2022年10月

おはようございます、三井堂です。

まずはセイコーオートマcal7005のヒゲ調整からやりました。
古いセイコーはヒゲ棒に対して完全にヒゲを内当てにしているので、それが姿勢差に影響を及ぼしていました。
内当てにすれば振角が落ちてきてからも時計が進む傾向を示すので、昔はよくこのような調整がされていました。
今回はヒゲ棒に対して完全にセンターに来るようにヒゲをいじって全体的なシェイプを整えました。
最大姿勢差5秒程度まで詰められたのであとは稼働させながら調整していきます。
12時間ワインダーにかけて+1秒なのでそこから平置きで1日10秒切るくらいになりそうです。

つぎ!オメガシーマスターオートマcal552
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ノンデイトのオートマキャリバー
1,2か月に1回アンティークを見にいらっしゃるお客さんからのご依頼
夏場しか使わないとのことでしたが、裏蓋には腐食が出ており防水性が担保できるか微妙なところでした。
1.05Φの太い裏蓋パッキンへ交換、リューズ内部パッキン交換で3気圧防水は確保できました。
風防にクラックが入っているので取り外して汚れ取りはしましたが、割れるとイヤなので防水検査は3気圧まででとどめてあります。
錆も薬剤に漬けて完全に処理したので軽い汗水程度だったら今後も問題なく使用できると思います。

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作業終了
酸化していたムーブ表面メッキ層も綺麗になりました。
ケースに収めて現在精度調整中。歩度+5秒くらいになると思います。


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間に3135を挟みつつ…

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こちらは店売りの565
一番芯自体が摩耗していてウケ穴に対してかなりがたつきが出ていました。
ウケ穴が一方向ではなく全体的に減っていると芯自体が減っている目印です(たぶん)
硬く焼きが入っていますが減るときは減るようです。

旋盤に一番芯をチャックしてバイトでシェイプを整え、それに合わせてウケ穴も詰めなおしてがたつきが無いように直しました。
この後洗浄機にかけている途中で来客があり今日はここまでで作業終了です。

休み明け木曜日はシーマスターから、多分エルプリ入りエベルへ続きます。
それではまた!



こんばんは三井堂です。
21日から新入社員 森くんが入りました。
未経験なので覚えることも多くこれから大変ですがしっかり指導していきます。

自分が無意識にやっていたことやなんとなく経験則でやっていたことも、指導のために言語化することで自身の勉強にもなりますね。

今日はキズミホルダーの長さ調整をした後に、電池交換の練習やピンセット研ぎなどやってもらっていました。
ミヨタ2035をなんとか電池交換できるようになったみたいです、ヨカッタ!

さて、時間を見つけながら自分の作業も進めていきます。
まずはオメガコーアクシャルクロノグラフ4カウンターcal3888
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60秒、30分、12時間、7日間積算計がついています。
オリンピック限定モデルでインダイアルが五輪マークを模しています。
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構造としてはそこまで複雑ではありませんでした。中間車などを挟んで回転速度を調整しています。

そういえば今日面白いお問い合わせがありまして、セリタ500ベースのウブロで時計を傾けると30分積算計の針が少し動くというもの
ウブロもこの機械と同じように30分積算計に出車をつけて、中間車を1個介して3時位置に移動させていたはずです。
リセットハンマーは30分積算計のハートカムにヒットしますが、中間車と積算計を取りつける歯車はフリーですから歯車同士の隙間ぶん僅か動くのは仕方ないですね。
メーカーからも同じことを言われたとのことでセカンドオピニオン的な感じでお答えしました。


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クロノグラフはカム式での稼働
コーアクシャル脱進器採用で3層タイプのコーアクシャルですが、かなり油切れが進んでおり時々止まる症状も出ているとのことでした。
コーアクシャルホイールとガンギの接触面を完全に綺麗にすることで突発的な止まりはほぼ解消します。
超音波洗浄だけでは不十分なことがあるので顕微鏡でチェックしながらの作業です。
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稼働チェック中
7日間クロノもちゃんと動いているので他の針も全て取り付けてケーシングを行いました。
歩度+5秒程度で調整中。

つぎ!セイコーオートマcal7005
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70年代最後期のオートマムーブ
いまの7Sの始祖っぽい設計です。部品も互換性がありそうです。
時々止まるということでバラしてみましたが、一番芯丈夫に軽い摩耗と一番芯下部にバリが出ていて軋みになっていました。
それぞれ補正してスムーズな動作になりました。
少し姿勢差があるので休み明けヒゲの再調整の予定

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途中でへろへろの1570をやったり
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年季のはいった角エルジンとかやったり…
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エルジンもヒゲ要調整個体です。
休み明けにまとめてやる予定です…。

30日まで予定少しつまり気味なので頑張ります。それではまた!














こんばんは三井堂です。
まずはIWCcal8541Bから
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ベリリウム銅製のオートマ部品、ほとんど摩耗しない良い素材です。
ただし部品を受けるプレートの軸部が減ったりすることはあります。
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一番芯上下のアガキが不足していたので穴石調整器にてメタルを動かして調整
加えて角穴車横のコハゼが摩耗していたのでストックから交換しました。
非常に丈夫なムーブメントですがこのコハゼの摩耗がたまーにあります。個体数で言うと20本やって1本くらい。
あとは概ね問題なく分解掃除を終えて振角300度程度 実測で日差+3秒くらいです。
店売予定。

次!ワテックス手巻き懐中(ユニタス6497)
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刻印などはありませんでしたが確か皇室の記念モデルで発売されたやつだと思います。
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いまとなってはあまりお目にかかれないユニタス社のマークがあります。
キャリバーは6497
大振りな懐中時計用の機械ですが歯車はやや華奢でよく摩耗している印象です。
この個体も2、3番にやや摩耗がありホゾ研磨にて対応しました。
cal6497用の部品はパネライが買い集めているとかいう嘘か本当か分からない話で、今は部品もなかなか手に入らないようです。

組み上げて振角300度、歩度+5秒程度で調整中。

つぎ!ベル&ロス ミディアムオートマ34㎜
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ベル&ロスの少し古めのモデル
ミディアムサイズの34㎜です。リューズチューブ交換をメーカー依頼後当店での分解掃除作業です。
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ETA2892を2針仕様に変更、6時デイト 文字盤は全面夜光という珍しいパッケージングです。

以前当店で分解掃除しているのが4年前で油も十分に残っており、部品の摩耗などもありませんでした。
通常の分解掃除で対応可能で振角290度歩度+5秒程度で調整中。裏蓋パッキンを交換して100M防水もOKです。

つぎ!グランドセイコーオートマcal9S61
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ノンデイトの9Sオートマです。
すでに防水検査とケース研磨を終えています。
今日は時間がぎりぎりいっぱいなので動作のチェックとばらしまで。
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9Sオートマも特に丸穴車周辺、輪列など油切れですぐに動作不良を起こすので定期メンテナンスは大事です。
こちらの個体は油も十分に残っており問題なさそうです。
今日はここまでで終業です。休み明けは9Sを組んで見積もり待ちの時計をバラす予定です。
それではまた!

おはようございます、三井堂です。
まずはセイコーサードダイバーcal6306
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デイデイトつきのオートマモデル

ローターが小さくムーブメント外周の1/3程度の幅しかないのが特徴的、ローターの回転もころころと軽快に回っているようです。
普通に考えればオートマローターは大きく外周部の比重が高ければ高いほど良く回りますが、1/3程度の小さい形状にしたのはなんか理由があったんですよね…。
トンボ本に書いてあったと思うのでまた会社でちょっと確認してみます。


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カレンダー部分、後年の大振りなクオーツともここらへんは同じ構造ですね。
プラ部品も特に破損などはなし

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セイコーダイバー特有のねじこみリューズ
普通のねじこみリューズは、n角形のパターンが切ってあるパイプとチューブにバネが内蔵されており、縦方向に伸縮して且つ横方向の動きに対しては角で滑りを防止する構造が一般的です。
ですが長く使っていると角が摩耗するので巻き上げ針送り時に空回りするようになってしまいます。

その点このリューズはほぼその症状は起きない構造ですよね。なにかあっても別作も比較的容易そうです。
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一番芯下部にやや摩耗がありましたが他は概ね良い状態でした。
組み上げて歩度+10秒程度で調整中。

つぎ!グッチクオーツ
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結局ETAが来てしまいました。まぁクオーツなんで…
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クオーツの動きの始点になるローター、永久磁石にカナとホゾが取り付けられたものです。
ローターの外側にはステーターとコイルが配されており、そこに電流が流れ電磁石化したステーターによってローターが1秒に1回ステップ運動する仕組み。
ステーターの形状はローターの回転の始まる初期位置やステップ角などにも影響を与えるので、衝撃によってステーターが変形すると針が逆回転したりするらしいです。

ちなみに上のローターは防水が効いていない為、生じた錆などを引き付けて動作不良を起こしています。
クオーツは防水効いていないと本当に一発アウトですね。私も修理時には絶対に防水性は確保するようにしています。
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小径パッキンセット
納品時からずっと静電気でくっついてるのでぐちゃぐちゃですがとても重宝しています。
リューズからプッシャーまで結構幅広くいけます。もちろんこれよりずっと小さいパッキンセットもありますよ。

リューズ内部から劣化したパッキンを取り出して、新しいパッキンを合わせて3気圧防水が確認できました。

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部品点数も少ないのでロンジンの手巻きもバラして上のクオーツと一緒に洗浄機に入れます。
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ロンジンお得意?の歯車が1個多い輪列
追加の歯車は回転速度が3番と一緒なので重い油をさします。
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同衾で失礼します。
クオーツは組み上げた後に回路不良に気づき回路交換
回路交換後0.82μAで稼働中。あれこれ最初からムーブ交換して6時窓仕様のカレンダーだけ交換すればよかったんじゃ…。

ロンジンはケースにかなり錆が出ていたので同時並行で薬剤につけて錆取り中。
機械部分はオシドリの表面が少し錆びている程度なので大分軽傷です。
組み上げて歩度+15秒程度で調整中。

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精度良いんでそろそろ店頭に出します。なかなか良い顔です。
火曜日はこれで終業でした。それではまた!







こんばんは三井堂です。
まずはタグホイヤーオートマクロノETA7750
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リューズトップ飾り直し、コマかしめピンゆるみ直し、分解掃除でお預かり
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外装の使い込みっぷりに反して機械は比較的綺麗でした。
リューズパッキンのきつさが気になりましたが、非ネジ込リューズで10気圧防水モデルなのでこんなものなのでしょうか。
下手に加工したりして防水性能落ちてもイヤなのでこのままで。
問題なく分解掃除を終えて振角270度、歩度+3秒程度で調整中。

つぎ!オメガスピードマスタープロフェッショナル手巻きcal1861
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他のスタッフの再修理品
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概ね部品は問題ありませんでしたが、出車の平ブレが気になりました。
洗浄後穴石調整器で圧入、車自体がゆがんでいたので動かしながら調整しました。
出車は四番車に圧入されており常にカップリングクラッチと噛み合いながら動いています。
これがふらふらブレながら動くと、当然噛み合いも浅くなったり深くなったりするわけで好調な動作は望めません。
クロノグラフを稼働させると更に噛み合いの調整はシビアになるので、まずはしっかり平ブレを調整してから各歯車の噛み合いを調整しました。

分解掃除を終えて振角300度程度、歩度+10秒弱で調整中。クロノオンで振角30度の低下
現在クロノグラフを連続稼働試験中です。

つぎ!ジンオートマ2本
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こちらはETA2824
sin556、ラッカー文字盤が綺麗なモデルでした。
振角も十分出ており、巻き上げの感触も良好だったのですが中はかなり部品が減っていました。
2番車は表面をポリッシュして再利用 3番4番は交換
オートマ減速車は旋盤でチャックして形状を整えてポリッシュしました。

分解掃除を終えて振角300度、歩度+3秒程度で調整中。

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sinn 244Tiです。
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ムーブメント外周部にはショック吸収用のゴムが配されています。
ヨットクラブやインジュニアなんかでもおなじみですね。十分に弾力があり再利用できる状態です。
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オートマ切替車のみやや摩耗あり
他の部品はゼンマイ含めて全て再利用しています。たまに感じる手巻きのざらつきは切替車のせいだったようです。
ケースも裏蓋パッキンを交換して20気圧防水〇、チタン製のブレスもコマ留めのネジがゆるゆるだったのでロックタイトを用いて全て再締め込みしてあります。

分解掃除を終えて文字盤と針ツケまで終えたところです。ジンは長短針の塗装がぼってりしているので針ツケが少しシビアですが上手く取り付けられました。
今日はここまでで終業ですそれではまた。
ETA続きで飽きてきたので明日は毛色の違うものをやりたいと思います。



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